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微妙な要求、オオシマさん

業務連絡に対しても、通常の雑談に対してもすぐに返答をしないオオシマさん。
ようやく連絡がついたときにヒグチさんから、次にまわってきたら“逆境に立たせてそれをクリアさせろ”と、条件を付けられました。

↓提出。


#008 sympathy
田舎の方が都合がいいが、ここはちょっとイキすぎだろ。全然店がみつからねえしよ。でもいい加減煙草もねえし、何かくっとかなきゃいけねえし。で、ようやく見つけたコンビニが
「ホッステーション0024 字店」。
一応はこの辺でチェーン展開でもしてんのかね。ま、食い物と煙草と適当に金が手にはいりゃいいんだ。贅沢いわねえよ。

店に入ったら深夜なのに客が4、5人いやがった。ったく。めんどくさいが大声だすしかねえよ。
「てめえら、おとなしくしてろよ。何かしたらこいつぶっ殺すぞ!」
と、一応声を張って近くにいたバイトのにいちゃんにナイフを突き付ける。

情けねえじゃねえか。一応俺はヤクザな仕事一筋でやってきてんのに、ナイフ一本はねえやな。せめて婦人用コルトぐらいは欲しいけど、代表の野郎が根こそぎ持ってトンズラしやがったからどうしようもねえよ。散弾銃は嫌だしな。
挙句の果てにあのど腐れ外道はヤバい方の上納金ちょろまかしといて全部俺になすり付けていきやがったからな。なにが、跡目は譲りたい、だ。あんなチンケなもん譲られた方が迷惑すらあ。

店長のオヤジはほんと小市民て感じだな。悪ぃけど、な。俺はもうちょっとばかし北の方に行ければいいんだよ。
「オヤジ。金がレジにいくらかあるだろ。とりあえず困らない程度でかまわねえから寄越せ。当たり前だけどサツとか呼ぶなよ。」

オヤジはマニュアルがどうとかグジャグジャ言ってたが煙草の棚漁りながら、用が済んだらすぐ出て行く、と伝えたらおとなしく金と飲み物だとかカップ麺とかを出してくれた。話の分かるヤツで助かったな。

客もこんな田舎でよもや自分が巻き込まれるとは思ってなかったんだろう。ぼんやり遠巻きに見てるだけだった。サツがくる気配もねえし、そんなに切羽詰まってねえからな。せっかくだからお湯貰ってカップ麺でも食べてこう。深夜だから逃げる気になりゃ楽に逃げられんだろ。

3分待ってる間に遠まきにしてる連中が声を掛けてきだした。サラリーマンの中年オヤジは、まだ若いんだから、とか、自首しろ、とか決まり文句を言ってきた。あのね。そういう問題じゃねえのよ。若いとかは理由になんねえの。無視して食い始めたらそのオヤジの後ろにいた、にいちゃん二人組が何を思ったのか近付いてきやがった。

背の高い方が、
「今、携帯持ってますか。」と、オドオドしながら訊いてきた。自首ならサラサラそんな気ねえからな。
と伝えると、もう一人の目付きの悪い方のにいちゃんが、
「そういうことではありません。貴方の主治医が連絡をとりたがっているんです。早く電源いれて確認して下さい。」
とか抜かしやがった。今さらあの医者が俺に何の用があるっていうんだ。ん。

――何でこいつらコノハナシ知ってるんだよ。

俺が呆然としていると、背の高い方のにいちゃんが店長に頼んで商品棚から携帯の充電器を持ってこさせた。何が何やらさっぱりわかんねえ。言われるままに留守録を聞いた。

かかりつけだった病院の2代目だろうキツネみたいな澄した医者が、聞いたことない声で始終謝り通していた。あれは末期の影ではない。資料を取り違えた。診断より進行は半年ほど余裕があるスピードだ。手術さえ間に合えば体力的にみて8割以上の確率で助かる。
つまり、誤診だったと。
にいちゃん二人が黙って顔色を伺っていた。



ふっざけんなよ!
何だよ誤診って!てめえ散々金とって、治療さして、検査さして、再検査までさして、助からねえとかホザイといて。今更。間違いでした、で済むと思ってんのか!
はらわたが煮えくり返り、手持ちぶさたに持っていた携帯を床に叩付けてヘシ折った。カップ麺を背の高いにいちゃんの顔にぶちまけてやった。目付きの悪い方は避けたから更にムカついて充電器を引っこ抜いて、野次馬しにきていた中年オヤジの頭に叩付けてやった。ついでに商品棚を蹴り倒して、やっぱり野次馬してやがったヤンキー二人を追っ払ってやった。肩を叩かれた。

振り向くと、目付きの悪いにいちゃんがお茶のペットボトルを差し出していた。受け取って一口飲んだら落ち着いた。

落ち着いて考えたら、何でこいつらそこまでわかったんだ、と気持ち悪くなった。それが顔に出ていたらしい、目付きの悪い方に促され、ぶちまけられたカップ麺の中身をはたき落としていたにいちゃんがやっぱりおどおどしながら、
「あの、最初に言って置きますが、からかうとか、そんな気、全くないですからね。大まじめに、話してますからね。」
とか、グジャグジャ話してきやがったから、にいちゃんは俺と目付きの悪い方の二人に前置きはいいから早く話せとどやされた。

「あの、あなたのお婆さんは、もう、かなり前にお亡くなりに、なってますよね。」
俺は、そうだけどなんでてめえが知ってるんだ、と普通に訊いたつもりなのに、身体はでけえ癖にビビりのにいちゃんは相方にパスをまわした。

「俄には信じ堅い話だとは思いますが、この男には死んだ人間の残留思念が見えます。要するに、お化けです。
単刀直入に申し上げますと、貴方にはおそらく亡くなった貴方のお祖母さまだと思われる方が憑いています。」
なんだ、こいつら。なにいってんの。こいつの目付きからしてそうだけど、いわゆるイッチャッテル連中なのか。

と、思っていたらそうではないことが直ぐにわかった。俺が実は在日だということは外見や振る舞いから、それでもバレたことがないけれども、わかったとしても。
故郷を離れて以来、誰にも話したことのない日本名ではない方、本名。これは婆ちゃんしか知らない筈だ。たった独りで高校まで育ててくれた婆ちゃんしか知ってるわけがない。こいつらは本物なんだ。

と、そこまで考えて永らく眠っていて俺からはなくなっちまったんだと思っていた罪悪感が芽生えた。婆ちゃんずっと俺のこと見てたってことだろ。情けねえじゃねえか。生まれなんて関係ないって言いながら手塩にかけて育てた孫がこのザマだ。せめて墓参りはしとこうなんて考えてたけど、来て欲しくもないやな。

で、婆ちゃんはなんて言ってるんだよ、と訊いたらビビりの方が
「早く手術を受けろ、だそうです。」
って、だけどよ。
これこの通りの見てくれよ。
金の都合なんてつく訳ねえじゃねえか。出所もそうだけど、てめえでまいた種だ。どこをどうすれば助かるんだよ、婆ちゃん。

三白眼が、
「貴方さえよければ、こちらで一旦立て替えましょう。都合のつく仕事があります。返済はそれからでも構いません。住む場所も確保出来ますが、どうしますか。」
と、妙な提案をしてきた。
宗教関連ならお断りだ。んなモンにすがってまで助かりたくねえよ。

ここまで来たらもう驚きを通り越すが、こいつは心を読んだかのように、
「ご安心下さい。確かに業界と呼ばれる世界ですが、貴方の考えているような怪しげなものではありません。それに合法な真っ当な世界です。」
と言った。夢のような話だが、そんなにうまくことが運ぶ筈がねえ。第一そんなに真っ当ならば俺みたいなのは入れてくれないだろう。

「大丈夫です。貴方は見掛けより人間がいいようだ。先程怒った時も、無益な殺生はしなかった。私の父は貴方のような面白い人が大好きです。きっと貴方に自分の人脈を使って何かしら仕事を与えるでしょう。」

意味がわからなかったからビビりに目で訴えると、
「こいつの親父さん、あの料理家のペテルギウス吉田なんです。」
と言った。

俺はペテルギウス吉田の息子に逢ったことよりも、ペテルギウス吉田が料理家であったという事実に驚いた。
だってあのオヤジはっきり言ってむちゃくちゃだよ。
バラエティ番組にやたら出てくると思っていたら、超常現象検証番組で否定派のオヤジと大激論したり、ドラマにレギュラーで出演したかと思ったら、深夜帯にゆるいレギュラー設けたり、歌だしたり、映画作ったり。そっかーあいつ料理家だったのか。

早速、三白眼は携帯で連絡をとり、簡単に俺の素性と状況説明をした。全くイカれているペテルギウスのオヤジは明日にでも面接に来い、と言った。

信じられない。

俺をひっ掛けてもせいぜいとれて内臓ぐらいだぞ。

「その様なことをすれば父の社会的地位が揺らぐだけです。」
そうだよ。俺なんか雇ったら社会的にヤバいだろ。

「父は業界の中でも相当な変わり者として通っていますから、返ってイメージアップになります。それに貴方が就くのは裏方の裏方です。」
ていうか、まず警察じゃねえのか。

「まず手術が先です。」
何のメリットがあるんだよ。

「書き方さえ気をつければ、父は立派な慈善家として評価されます。それに父は仁侠映画が大好きなのです。」

あっ、そう…。


遠巻きに見ていた連中は集って何かやりだした。まあ、通報するわな。
自首するから心配するな、と言おうとしたら、充電器をぶつけてやったオヤジが、
「少ないが、とっときなさい。親父さんに迷惑かけずにうまくやるんだぞ。成功したら自首しろよ。」
と、金を渡してきた。向こうでヤンキーたちが激しくうなづいていた。

もう訳がわからなすぎてぼんやりしてしまっていたら、何故かビビりのにいちゃんは店長のオヤジと一緒に号泣していた。

とりあえず時間になるまでペテルギウスの息子の家においてもらえることになり、近所だという家に向かった。相方のビビりのにいちゃんも泊まるらしい。
歩きながら、まだ心配だったから訊いておいた、

これって、匿うことになんじゃねえのか。にいちゃんも親父さんも犯罪者になっちまうぜ。やっぱり先に突出した方がいいんじゃねえのか。

すると息子は左端の口元だけあげて、
「うまくやるやり方ならいくらでもありますから。」
と言った。全く見当がつかねえがこの親子ならなんとかするのかもな。めんどくさいからもうこれ以上心配するのはやめよう。

ビビりのにいちゃんに、こんなやつがダチなのにお前はめちゃくちゃ肝がちいせえな、と言うと

「いや、恋人なんです。」
と訂正された。
案外こいつが一番凄いのかもな。
fin.


だそうです。
逆境違いだと思います。病院に対しての意識がなんだか暗いですね。
微妙な要求から微妙な設定をつけられました。
ツヅク
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プロフィール

JuhlaSisko シノダ

Author:JuhlaSisko シノダ
シノダ レイコ

1987年 5月生まれ。
JuhlaSisko、制作担当。
三度の飯と同じくらい編み物が大好き。生まれも育ちも茨城。


ミコシバ デミコ

1987年 10月生まれ。
JuhlaSisko、設計担当。
口も悪いが手も早い。生まれも育ちも茨城。


【活動歴】
2009年   創作人形ユニット「雑用姉妹」結成。

2010年5月 デザインフェスタに初参加。

2014年   創作人形ユニットから創作編みぐるみユニットに。
      このころから作品の販売を開始する。

2015年末  本格的に作品の販売活動を始める。

minne

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