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オオシマさんは結婚式に招待されていたそうです

と、いうわけであの時はちょうど連絡がつかなかったそうです。to ヒグチさん


#010 first

俺は約束は守る男だ。この哀れな男は容姿から様々な誤解を受けながら生きてきた。この誠実さだって容姿のせいか余り評価されない。

――俺はそんなにチャラくないんですよ。
と、あいつとの約束を果たす為にリカちゃんキャッスルの所在地をネットで検索する。思いの他辺鄙なところにあるようだ。これではいくらあいつでも一人では無理だ。あいつは免許を持っていない。その気になればエスパーに近いほどの推理力さえ身に付けられるのに、運転に必要なセンスだけはどうにもならなかったらしい。

その代わりという訳ではなかろうが、出発時に簡単に用意をしたら、弁当を作っておいたから積んでおけ、と言われた。こいつは俺と同じくらい料理をすることができる。けれど作業中の雰囲気が恐ろしくて、自分で作った方がマシだということに気付いてからは主に俺が作っている。



早い時間に出たから道は混んでいない。別に必要性はなくても、道を知っていても、綺麗だというだけの理由で暗い時間は高速を利用する。夜の高速道路が好き。こいつも夜の高速道路が好き。

でも理由は訊かない。怖い予感が十二分に匂うから。確かにお化けっぽいのはチラチラ見えるけれど、意識しなければ大丈夫。確率的には一般道だって変わりはない。だったらスピードがでるだけマシじゃないか。

だけど少しでも怖くない雰囲気でありたい。従ってこの状況でこいつに話はフれない。『怖さは暮らしのエッセンス』という考え方なので間違なく怖い話を披露されてしまう。音楽に限る。間違いがないもの。

俺は
――寝てていいよ。着いたら起こすから。
と、我ながらかなりいい感じのことを言ったつもりだったが、
――何か面白いものが見えたら困るから、起きてる。
と、返ってきた。

なんだか2周も3周もしたようなことを四六時中考えているくせに妙に子どもみたいなところがある奴だ。
そして、こういう時、世間一般の恋人はなにかしら会話をする筈。実際過去にそうやってきたしね。男が気の利いた話題の一つでもフるべきなのだろう。けれども。

相手が持参してきたスケッチブックを取り出して、流れる車窓をスピード写生し始めたら何か話し掛ける方が空気読めてないと思う。一人旅、電車の車窓相手にやるオジサンの話なら聞いたことあるけど、デートでやるやつはこいつぐらいだろうな。

横目で見やってから、また運転に気をむける。
――そういえば、何でこいつに逢ったんだっけ。

――ああ、富樫さんの結婚式だ。

俺は中学時代に、富樫さんは異性であったけれど、同じ吹奏楽部に所属してたから何かしら接点があった。

富樫さんからミニコンサートのポスターの依頼を受けたこともあった。要領が悪い彼女とお人好しな俺は委員会駆り出されメンバーの常連だったものだ。本来なら彼女が作るべきポスターなのだろうがその時には既に超ドジっ子なのを知っていたので引き受けてやった。以降ずっとその様な役回りだ。

当然、周囲に恋愛関係を疑われたがそういう感情はみじんもなかった。好意は確かにあったけど妹のようにしかみれなかったから。そんな彼女が結婚することは本当の兄のように嬉しかった。相手がしっかりしてそうな人だったのにも安心した。

けれど二次会のハンドベル演奏には閉口した。それは変だと、よく言われるけれど
――この音と黒板を引っ掻く音ならまだ黒板の方がいいや。
と、廊下に引き上げた。
その時貸し切った場所は分煙にうるさくなかったからわざわざ廊下にでるやつはいなかった。

と、思ったら誰か出てきた。
よく顔の綺麗な人物を、人形のようだと喩えるが、そいつは悪い意味で人形のようだった。生気がないんだもの。それに実際に人形みたいな顔の男がいたら気味が悪い。
目があったため、とりあえず挨拶をした。すると向こうは煙草、電話の気配がないことで勘違いしたのだろう。
――お加減が悪いんですか。
と訊いてきた。

慌てて、ハンドベル嫌いの説明をするとあっさり納得してくれた上に、自分もそうだ、と答えた。

――やっぱり苦手な人いるんですね。
と、返して奇妙な点に気が付いた。

この男はどう見積もってもけっこう年下。しかし富樫さんのお相手は4歳ほど年上だったはず。親族ならば先の式で見掛けていなくてはおかしい。富樫さんのではないだろうが、ふたりのどちらの知り合いにしても雰囲気がおかしい。

スーツを着ていて、髪も黒。
しかし、全身黒で固めすぎではないだろうか。二次会とはいっても祝いの席だし。加えて両耳に痛くなりそうな程のピアス。

真っ当な職業の香りがしない。

探りをいれるつもりで、新郎の人柄を訊いてみたところ、
――いや、私は富樫さんの知り合いなんです。
と訂正された為、その後富樫さんのところまで行って説明を求めた。妙なやつと関わっていないか心配だった。

富樫さんは何故か大爆笑した為、テーブル全員から注目されてしまった。そして例の男を、
――こうめーちゃん、ちょっと来て!
と呼んだ。

女であったという事実にもの凄く驚いた。思わず本人に向かっても、本当に女なのかという今にして思えばかなり失礼な質問をした。彼女は日常茶飯のことなのだろう、対して嫌な顔をせずに、精神的にも女性であるが楽な格好が好きなのでこうなった、と答えた。
はっきり言って珍しいぞ。このタイプ。
興味本位で色々聞いているうちに、彼女が画家で、富樫さんをモデルにしたことから知り合いになったということを知り、富樫さんの可愛らしさをテーマに意気投合したり、「こうめ」ではなく「こうめい」だということにまた驚かされた。

その内に富樫さんが、せっかくだからツーショットを簡単でいいから描いて欲しいと彼女に頼んだ。確かにうまかった。だけど、

すっかり気を許した俺が、またもや失礼にも、
――余り光をつかわないんですね。
と言うと、俺を面白いと評し興味があればと、小さな展示会の案内をくれた。



あの後、展示会に行った。
割りと好きな絵もあったけれど、やっぱりなんだか怖い。それはこいつに対してもだ。さばさばし過ぎるくらいにさばさばしたやつだということは初対面で判明している。意見を求められたら素直に返した。
こちらが失礼なくらい素直になると、向こうも同じように接してきた。こいつに建前があるのか疑問だが。だから、



――この山道凄いね。下に車が落ちてるけど、この高さでも車ごと落ちると死ぬのかな。

何故、今こんなことになっているのか分からない。死んだ婆ちゃんが
――生きてるとおおかた予想に裏切られるよ。
と言っていた。
恋愛は理屈じゃない。だけど。
感情は言葉じゃ測れない。だけど。

あんまり凄いと解説が欲しくなる。
できればこの先怖いことに耐性がつくようになるかの予告も欲しい。
fin.


リカちゃんキャッスルは確か福島県にあったと思います。

なかなか見ごたえがあるそうです。

ツヅク

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プロフィール

JuhlaSisko シノダ

Author:JuhlaSisko シノダ
シノダ レイコ

1987年 5月生まれ。
JuhlaSisko、制作担当。
三度の飯と同じくらい編み物が大好き。生まれも育ちも茨城。


ミコシバ デミコ

1987年 10月生まれ。
JuhlaSisko、設計担当。
口も悪いが手も早い。生まれも育ちも茨城。


【活動歴】
2009年   創作人形ユニット「雑用姉妹」結成。

2010年5月 デザインフェスタに初参加。

2014年   創作人形ユニットから創作編みぐるみユニットに。
      このころから作品の販売を開始する。

2015年末  本格的に作品の販売活動を始める。

minne

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