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オオシマさんとヒグチさんのチャットより

13回目。

微妙に山場を持ってきたみたいね。オオシマさんはヒグチさんへのお礼を何にするつもりなのかしら。



#013 feelings
最近でかい方の犬の様子がおかしい。
帰りが遅くなった時、いつもなら勝手にしてくる理由を話さない。携帯の着信に過剰に反応している。外出嫌いの癖に飲みの誘いをあまり断らない。

本当にわかりやすい男だ。
これは典型的な浮気の諸症状である。

可愛らしい女の子ならばここで男を責めるものだろう。おろおろしたりした方が良いんだとはわかる。
しかし自分がそうではないことは解っている。あいつも知っているからむしろ白々しいし、やり方がイマイチわからない。

自分から口を割るまで待とうと思っていた。しかし、引きで見ているあたしが悪いのかもしれないが可哀相なぐらいにおどおどしている。
外出の度にハーゲンダッツを買ってくるのだ。後ろめたさのオーラが全面的に出ている。仕方ないからこちらから切り出すことにした。
どこまで女の腐ったような奴なんだ。

端的に、
:誰か好きな人できたの
と訊いてみた。
そもそも正解があるのか知らないけれどわからないのに変に気を回すとろくなことになった試しがない。

一瞬凄く解りにくい顔をされた。
そして次の瞬間、あきらめたような顔になった。
そして一言
:ごめん
と謝ってきた。


そうか。

と思った。
自分の悪いところ。
執着心がなさすぎるところ。

心を寄せてきたことに興味をもった。だから一緒にいようと思っていた。しかし今は違うようだ。

あたしは誰のことも上手に愛せないようだ。今までの男の言葉をまとめるとそうなる。
そもそもこんなに冷静でいてはいけないんだということも今は知っている。だけどあたしはそういう奴だから。
だから。

だったらその女性の元へ行かせてやるのが筋だろう。万事丸く収まるし、こいつは凄くいい奴だから好きなようにさせてやりたい。だから、

:じゃあ別れようか
我ながら筋の通ったよい提案をしたつもりだったんだけど、
:ちょっと待って!!!

びっくりするぐらい大きな声をだされた。
何を待てばいいのだろう。

:待って! ちょっと待って・・・



言われたとおりに待ってやった、ら、
ぐちぐち語り出した。全部で2時間もかかった。 要約すると、
『確かに今気になる女性がいる。しかし本当に好きになったのかどうかわからない。加えてお前と離れた時に中途半端な気持ちになることが予想されるため怖い。』



知るか。
どこまで男らしくなくなったら気が済むんだ。
:なんでそんなにあたしに執着してるの
:なんでそんなに執着してくれないんだよ
:そもそも興味を持ってきたことに興味があったから
:興味本位なだけなのか 誰でもいいのか
:それは違うと思うよ 第一こういう接触をしてきた人間は他にいない
そういうあんたは何なの
:…よくわからない

ようやく怒りポイントが見つかった。
たわけが。ふざけた口きくのも大概にしろよ。まだ考えてなかったのかよ。前に考えておくって38回は言ったよね。

その後上記のことを伝えたらあろうことか逆ギレしてきた。『わからないものはわからない』、

というならば別れればいいじゃないの、と伝えるとそれは嫌だという。
なんて素直なやつなんだ。それは駄々っ子じゃないのさ。めんどくさい。
:相手の人はどう思ってるの
:告白された
わかりやすい。



週末の昼間から二人で隣りの市のショッピングモールの喫茶店にいくはめになった。相手の女性に逢いにいくのだ。散々話し合ったが、それがいけなかったのか何周もしてしまい、
『こいつに対してどのような気持ちでいるのかを両者から聞き、向こうの方が優っていると感じられる点があったら別れよう』
となった。さぞかし先方も迷惑するだろう、と思っていたのだがあっけなく了承してもらえた。
こちらは化粧やスカートなどなれない用意で本当にめんどくさい。しかしいつもの格好で同性愛者に間違われて話がこじれたらもっと面倒だ。
ま、男にしてみればかなり楽しい状況かもね。あたしも実際『どうして好きになるのか』の正解がわかるやもと期待しているフチがある。

相手側の人は凄く可愛らしい顔をしていた。オマケにあたしを見ても笑顔が全く崩れない。大した自信だがこれだけ可愛ければ赦されると思う。
軽く自己紹介をした。

一般的に美人は態度が悪いとかよく聞くけれど凄く腰の低い人だった。まあ、この状況下では一番発言力があるのはあたしなんだろう。
彼女、石森栄さんはあたしという存在を知らずに告白してしまったらしい。それで今まで何回か逢ってしまったこと。まずそれを謝ってきた。

さあ、どうするさね犬飼清次郎よ。
あたしだったら石森さんをとるよ。
彼女がいるのに、とかあるのかもしれないけれど、それは何度もチャンスがあったのに言わなかった犬が悪い。ついでに言えばこんなにめんどくさいことになったのもお前が悪い。

:彼女さんがいたのに…すみません
と重ねて謝るので

:いえいえ、言わなかった 犬飼が悪いので気にしないで下さい
と応えた。

この場合返事をすべきなのはあたしだろうし、この男は俯いて固まっている。お前は人見知りの子どもか。

石森さんの顔が引きつった。
はて。

若干引っかかるがそれは置いておきましょ。一番に気になることを訊かなければ。
『どうして好きになったのか』。

でもこのままだと『彼女がいるのに好きになるなんていい度胸してるな』の意味にも取れてしまうので、『この男のどんなところが好きになったのか』と質問の形を変えた。

案の定すごく驚いた顔をされた。
それはそうだろう。あれが全てだとは思ってはいないけれど午後イチのドラマでこの状況では必ず修羅場になる。現実世界で修羅場を期待するのは余程のモノ好きだけだと思う。だからああいうドラマがあるんだろう。

石森さんは怪訝な顔をしながら、やさしいところ、とか、誠実なところ、などをあげた。

うーん。

違うでしょ。
そんなもんなの。
なんか、なあ。
ねえ。

だってそんなの誰にだって見つけようと思えば見つけられるじゃない。
あたしが訊きたいのは大勢の中から何故この男にしたのか、だ。

きちんとあたしが訊きたかった内容を明かして再度質問をすると、怪訝な、と言うよりも困った顔をされた。
:ほんとうにこれが理由なんです、ていうかそういう貴女はどうなんですか、ちゃんと犬飼君のことを好きなんだったら理由があるんですよね

そうだね。質問するなら自分の意見も言わないとね。

今は石森さんの表情の変化の方が若干気になってきてるけど、あたしの意見を述べさせてもらうならば、

:早い話が、興味本位です

あいつがものすごい勢いでこちらを向き直ったがもう気にしないことにした。相手をしていると話が長くなる。


興味本位というのは少し語弊があるかもしれない。
ぶっちゃけこの男のタイプは石森さんのようなかわいらしい女性だ。にも関わらず近づいてきたことに興味がある。
あたしはかなりの難あり商品だ。正直自分でも自分に恋人という立場でのアピールポイントが見つからない。
しかし、同居するまでに至ったということは、この男には何か思うところがあったのだろう。あたしは純粋にそれが知りたい。
誰だって自分の価値には興味があるだろうと思う。

第二に。


ここまで喋っているとようやく石森さんに感じていた違和感の正体に思い当たった。
自分の話なんてどうでもいい。今はそちらが気になる。
:遠慮なさらずにどうぞ

首をかしげる石森さんに、
:どうして煙草を吸わないんですか

と言うと、ものすごくびっくりした顔を披露してくれた。それはそうだろう。隠していたのだろうから。

別に女性が煙草を嗜むことなんて咎める必要ないと思う。体に害はあるが本人が分かっていて吸うのだから。男も女もそれは同じ。
隠していたことが気になる。

この男は微妙に煙草を吸う。ときどき思い出したように吸う。

普通に付き合っていくならばどうして隠したのかが気になる。
再び首をかしげてうやむやにされそうだったので補足。

その鞄についているキーホルダーのミニライト。それは煙草のオマケだったと思う。
そしてここは喫煙可の席だ。これほどきれいにネイルを塗っているような女の子が煙草の匂いが髪や服に着くのを嫌わないのは少し腑に落ちない。もし、この男に気を使って禁煙は避けたのだとすれば、他のテーブルと同じように灰皿がなければおかしい。おそらく、待っている間に吸った吸い殻が入った灰皿を下げさせたままにしてしまったのだろう。


またやってしまったようだ。
あたしは昔から言っちゃいけないことを言ってしまうところがあると父に言われている。もう22なのに、やってしまったあとの相手の顔を見るまで気付けない。


:知ったらきっと、ガッカリすると思ったから…。
:そんなに欲しいですか、この男

:いや、そんな、ものみたいに言われても……付き合いたい気持ちは凄くありますけど…

それなら、
:ではお譲りします、どうぞ


えー。
と横からかすれ声がしたが、そんな場合ではない。この男より絶対あたしの方がうけた衝撃が大きい。


ショックだった。

あたしの口では絶対そんなこと言えない。
自分を隠してまで愛されたいなんて考えが起きない。
そもそも“愛する”とかいうことがわかっていないけど、こんなに長いこと誰かと続いていて、一緒に暮らしていること自体あたしの中では“愛する”に近かった。

だけど、この人の方がどう考えたって優っているじゃないか。

まだこの男について知りたいことは沢山ある。けれど、
好奇心よりも、愛情の方が大切なんでしょ。石森さんといた方が絶対きちんと恋人という関係になれる。
その方が幸せでしょ。

人を愛するということがこの年にして理解できない欠陥品のあたしだけど、人の幸せを願うこと位はできる。

こんなにアッサリやられたら気にならない方がおかしい。

:どうしてそんなにアッサリと…
:嬉しくないんですか

:嬉しく…?嬉しいですけど、あなたはそれでいいんですか

:私は…
あたしは、あたしよりこいつが欲しいと、一緒にいたいという気持ちの純度が高ければその方がお互い幸せになれる確率が高いと思ってる。だから差し上げます。

余り嬉しそうじゃないですね。
石森さん、それはどうしてなの。


:だって余りにもあっけない…というか……ちなみにさっきの二つ目の理由ってなんだったんですか


そんなこと。
石森さんがどうしてそこまで好きになったのかが全くわからないけれど。それに比べたら取るに足りないことだ。

あたしは有名人の娘として生まれて、ちょっと変わった病気を持って生まれた。周りは当然ものすごく気をつかってくれた。
けれど残念なことにあたしは人の嘘を見破ることに長けている。嘘なんて大抵が方便でつくものだから知らない方が幸せに暮らしていける。知る瞬間はいつも寂しい。

父親はさすがに親だけあって変わった人だから一等付き合っていて楽だった。どんなにマズかろうと必要だと思ったら言ってくれる。

絵の勉強を独学でしかやらなかったのは正直な感想が望めないと思ったからだ。たまにこき下ろしてくる人物に出逢っても狙いでやってたりする。

犬飼清次郎は父親以外の唯一の例外だった。だから興味を持った。それだけ。それだけなの。


急に横の男が立ち上がってテーブルに両手と額をつけて、
:ごめん、やっぱり君とは付き合えない
と言った。


何が何やらさっぱりわからない。
一生懸命理解しようとしていると、石森さんはとても華やかな笑顔で
:わかりました、仲良くやってくださいね
と言って退席してしまった。
ちょっと泣いていたかもしれない。
意味がわからない。


:なんで
と訊くと、泣きそうな顔をしながら

:後で話す、話すからとりあえず一発殴ってくれ
と言われた。
理由もわからずに人を殴っていいものか。


と思ったけど本人の希望なのだから殴ってやろうじゃないか。
大事にしている顔が傷つかないように背中に一発エルボーをいれてやった。

“わからないこと”に思ってた以上に腹が立っていたらしい。
かなり綺麗にはいってしまい奴は泣きながら軽い呼吸困難に陥っていた。
fin.


長いな。そしてやっぱり背中って決まると息止まりそうになるんだね。

危ないからやっちゃダメ。

ツヅク

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プロフィール

JuhlaSisko シノダ

Author:JuhlaSisko シノダ
シノダ レイコ

1987年 5月生まれ。
JuhlaSisko、制作担当。
三度の飯と同じくらい編み物が大好き。生まれも育ちも茨城。


ミコシバ デミコ

1987年 10月生まれ。
JuhlaSisko、設計担当。
口も悪いが手も早い。生まれも育ちも茨城。


【活動歴】
2009年   創作人形ユニット「雑用姉妹」結成。

2010年5月 デザインフェスタに初参加。

2014年   創作人形ユニットから創作編みぐるみユニットに。
      このころから作品の販売を開始する。

2015年末  本格的に作品の販売活動を始める。

minne

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