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オオシマさんが書いてくれたよ

#003 coke


彼女は作品に取り組んでいた。表情は変わらないので分からないが真剣だということは伝わってくる。
それに普段よりも三白眼に生気が見受けられた。こちら側の角度からでは余り確認することはできないが何やら唇が動いている。ようく耳をすませると歌を口ずさんでいた。「やぎさんゆうびん」。

しろやぎさんとくろやぎさんのやり取りをエンドレスでリピートし続けている。怖い。
けれども作業は快調に進んでいるようだ。怖いといっても歌いたいときに歌うんだこいつは。
だから聞かなかったことにします。

作業はほぼ中盤まできているようだ。もう大体俺からも何の絵を描いているのか分かる。
海岸に佇む女性。スーツ姿なのでOLのようにも見える。後ろ向きなので表情が分からない。
彼女はこのエキセントリックな行動、趣向、外見に反してそれほど前衛的な作品は創らないらしい。
分かりもしないのに尋ねたりする行為は失礼だろうと思いこちらからあまり訊かない。むこうも語らない。
でも一時かなり原色バリバリの超印象派の作品を見て、あまり好みではないというようなことを語っていたので絵に対するフィーリングは合うほうなのかもしれない。
たしかにこっちの方が商業的に需要ありそうだしな。アレよりは。

彼女の画材は作品によって変わる。作風ががらりと変わる、変える必要があるからではない。
飽きてしまうからだ。芸術にやり方とかないんだろうということは俺にだってなんとなくは分かる。
だけど全く縁のない俺にだってこの画材の使用方法がオーソドックスなものでないことが分かる。
こいつは絵について誰かに習ったということがないらしいし。確か独学だったはずだ。
だいたいキャンバス?キャンバスではないけれど何かそれ的な物からして違う。

製作初期段階に段ボールに何やら粘度の高い白い液体を適当な感じに塗りたくっていた。
乾くとすぐに、がしがし下絵を描いてすぐさま塗りに入っていた。それからだいたい一週間。
現在の時刻は午前4時。こいつの活動時間としては夕方ぐらいに入るのだろうか。
一回の睡眠時間が長くて2時間程度と言っていたから夕方も何もないのか。だから重なる時間が存在しているんだけどね。起きたら、いないと思っていたら、案の定作業していた。

一日の活動時間割がどんなものかは知らないがペース早くないだろうか。俺の中で勝手にこういう絵を描く人はのんびりじっくり描くものだと思っていたから。
描き方、タッチだって描いている題材におよそそぐわないと思う。
昔、夕方のドキュメンタリー番組で銭湯の富士山を描いている画家を取り上げている回があった。銭湯の画家は営業時間前までに絵を仕上げなくてはならない。だからものすごいスピードで描いてゆく。画家なんだからアーティストには違いないのだろうけれど、むしろ職人の香りがした。
彼女の描き方はまさにそれ。

ぼんやり眺めていたら手を止めて休憩し始めた。脇に置いてあったコカ・コーラのペットボトルを引き寄せておもむろに飲み始めた。ほっとくと食事をとることすら忘れる人だ。喉が渇いたことに今ようやく気がついたのだろう。だからといって俺も一応飲むのだから1.5?の買い置き用のペットボトルをラッパ飲みするのはやめて欲しかった。最初に発見したときに止めるようにすぐさま注意をしたら、今さらそこを気にするのか、という旨のことを言われた。確かにそうだけれどもそういうことではない。

また作業を始めたな、と思っていたら作業はそのままに、何の用だ、と訊かれた。
気づいていたのか。だったらもう少し早く声をかけて欲しかったよ。一旦振り向く、とかね。だって怖いじゃん。
本当に忍びの世界で生きているわけではないのだから何もそんなに勘が鋭くなくてもいいと思う。気配を消すこともものすごくうまいし、始終暗闇にいるせいか夜目が異常に利く。

前に、ぼんやり宙を見やりながらシャンプーの残量について考えていた時。
黙って見つめているな、と思っていたらこいつがその考えていた内容を大体言い当ててきて心臓が止まりそうになった事があった。なんでもその時に読んでいた脳科学の本の「眼球の動きによって思考を読み取る」というものを試してみたらしい。

飽きっぽい性格で本当によかった。あのまま興味が持続して追究されていたら、人間が辿りついてはいけない境地に辿りつかれてしまっていたような気がする。いくら彼女とはいえどもNIGHT HEADに出てくる人みたいな人と同居するのはかなりのストレスだ。一応プライドっていうものがあるから見せたくないものはある。ていうかありまくり。

別に目が覚めたらいなかったからなんとなく見にきただけだ、と伝えると珍しく描いてるものに対する感想を求めてきた。

海辺に後ろ姿で佇むスーツの女性。海は凪いでいて天気も穏やか。スーツも別に暗い色ではない。
だけど。
なぜか、手に赤い風船をもっている。意味深。怖い。なに、思いつめているわけなの。

海が好きだった恋人。けれども不慮の事故で帰らぬ人となってしまった。しかも飛行機が海に墜落したことによる事故死。遺体の一部はおろか遺品すら彼女の元には帰ってこなかった。何年も経過したが婚約の約束まで交わしていた彼をそうやすやすと忘れることはできなかった。その間にも色々な出会いがあったけれどもどうしても死んでしまった恋人のことを忘れることが出来ずにとうとう誰とも交際にすら至らなかった。彼の両親は心配して彼女に見合いを勧めてきた。その帰り道、海の見える道をバス停まで歩きながら、彼女はとうとう彼と精神的にも別れを告げる決心をする・・・・・。

みたいな。
だって色調はマイルドなのになんだか違和感があるんだもん。なにこの違和感。不穏な空気感。怖い。

ああ、コントラストが妙に強いんだなこの絵。タッチは穏やかなのに凄い威圧感があるよ。なにこの迫ってくる感じ。普通にゾンビの絵とか描いてくれた方がまだそういうものだと思って受け流せるよ。怖え。

上記のことを素直に伝えたところ、ふうん、とだけ言ってまた職人的作業を開始した。
やっぱりな。意見反映する気さらさらねえよ。言ったところでなおすような奴じゃないけどさ。分かってたけどさ。じゃあなんで訊いたんだよ。後味悪いぞ、てめえ。この。

口に出して言えよ、カマ野郎。
ええええええ。見てないんだから例の技すら使えないだろ。なんでだよ。怖いから。せめて理由を。
訊いたらすぐに教えてくれたが全然怖くなくなかった。空気の振動って。何者だよ。人間だよね。信じてるよ。

彼女が珍しく感想を求めてきたのは「ずっと自分に理解できなくて、だけど理解したいものをもっている人間の意見を聞いてみたかった」のだそうだ。他にいないのか訊いたところ、本当のところを言ってくれると推察できる人間は俺ぐらいしか思い当たらなかったからだそうだ。
その「理解したいもの」っていうのはなんなんだろうか。普段俺が言っている内容で理解できない、と言ってきたときは大抵その理由をいってきて「これこれこうだから嫌い」と言う。と、いうことは理解する気がさらさらないということだからこれではない。やりたくなった時がやり時、という人間だ。今まで訊いてこなかったのは非常に腑に落ちない。

それはなんなんだよ。と、尋ねると、まだよくまとまっていないからもう少し待ってくれ、と言われた。
なんとなく疎外感を感じる。なので、

「お前犬とか大丈夫な人だっけ。」
「そうだよ。飼いたいの。」
「うん。なにが良いかな。」
「ちっちゃいのがいい。」

ペット飼ってみようかと思います。
fin.



だそうです。

この流れで続きを書く人は「犬」を出さなければならない羽目になりました。

ツヅク




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プロフィール

JuhlaSisko シノダ

Author:JuhlaSisko シノダ
シノダ レイコ

1987年 5月生まれ。
JuhlaSisko、制作担当。
三度の飯と同じくらい編み物が大好き。生まれも育ちも茨城。


ミコシバ デミコ

1987年 10月生まれ。
JuhlaSisko、設計担当。
口も悪いが手も早い。生まれも育ちも茨城。


【活動歴】
2009年   創作人形ユニット「雑用姉妹」結成。

2010年5月 デザインフェスタに初参加。

2014年   創作人形ユニットから創作編みぐるみユニットに。
      このころから作品の販売を開始する。

2015年末  本格的に作品の販売活動を始める。

minne

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